耳ラジブログ

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EU離脱によって解き放たれる新生ドイツ!?

1973年イギリスは念願とも言えたECへの加盟を果たします。イギリスのヨーロッパ統合のターニングポイントともいえるこの出来事から50年弱、世界初の超国家組織という実験に人々は息を飲んで見守ってきました。

 

2016年イギリスは国民投票の結果を受けてEU(元々はEC)からの離脱を表明、離脱期間を経て来年からイギリスはEUから完全に離脱します。現在EUとイギリスの間では離脱後の関税や企業への補助金などのルールをめぐって交渉が紛糾していますが、歴史的に見た時にEUにはどのような役割が与えられていたのかを今回は考えていきたいと思います。

 

ドイツ二重封じ込め

1945年第二次世界大戦終結すると、ヨーロッパではドイツの戦後処理が問題となりました。ドイツの東側を占領したソ連、西側を占領した米英仏との間ではイデオロギー(資本主義・共産主義)の違いや戦後ヨーロッパの勢力圏をめぐって紛争が生じます。

米ソ冷戦の起源はこのようにドイツの戦後処理を発端に始まったと言われています。

 

西ドイツと東ドイツというように分断国家となってしまったドイツは、西をアメリカを中心とする資本主義諸国に東をソ連が中心となっている共産主義諸国の陣営へと取り込まれます。ドイツはアメリカにとって二度も世界大戦で対峙した国家ですから、ナチズム(ファシズム)といった過激な思想を抑え込まなければなりません。

 

ドイツに加えて朝鮮戦争などで世界化、軍事化した米ソ冷戦のライバルであるソ連を封じ込める必要があったアメリカは、NATOといった枠組みを使ってドイツを同盟の内側に封じ込め、ソ連を外側に封じ込めるという二重の封じ込め政策を取りました。

 

EUの役割

ヨーロッパの中央にあって周辺に多くの国との国境を持っているのがドイツです。

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ドイツはこのような地政学的な立地と人口の割に少ない耕地面積などを考えると、本来軍事的な力を強める傾向にあります。その軍事化されたドイツは二度の世界大戦でとてつもない軍事力、技術力などを見せつけました。

こうしたドイツの脅威を封じ込めるためには、ドイツを戦前の世界大恐慌後の経済的混乱で生じたような経済的孤立を防止しなければなりません。その手段としてEUはドイツをラディカルな思想から遠ざけるための安全弁だと捉えられます。

 

こうした観点からEUという試みはドイツの安定とヨーロッパ国際秩序の安定という面で継続されるべきだと見ることができるのできるのです。イギリスのEU離脱を様々な観点で捉えることが可能ですが、今回はドイツの封じ込めという視点からEUを語りました。